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性癖の煮凝り。

No.23

血風、咲き誇れ/イサファウ
壇香梅と剣契

 風に揺れる濡羽色の髪。
 陽光に映る白皙。
 伏せた目元に深々と刻まれたくま。
 知っている男と瓜二つの――当然だ、彼もまた「イサン」なのだから――けれど、知らない男の持つ扇が空を切ると共に、一等鮮烈な黄色が視界を覆い尽くす。まるで演舞でも披露するかの如く、花色と同じそれが振るわれるたび、一層の鮮やかさを増して花々は咲き乱れ、血の臭いすら掩蔽されてしまうほどに、ぴりっとした蘞辛い香りで鼻孔は満たされていった。
 噴き上がる赤が黄色にかかっては、花弁のひとひら、またひとひらを染め上げていく。
 息を吸うように刀を振り上げ、吐くようにして斬り伏せる。それが「剣契」と呼ばれる集団だ――しかし、いつしか刀を持つ右手を下ろしたまま、やがて晴れた視界に名残惜しささえ覚えながら、自分はその光景にただただ魅入っていた。

 ――あんな風に、美しい花を咲かせることが出来たならば。

 物言わぬ死屍累々。夥しい血河。
 訪れた静謐の中、先ほどと同じ場所に佇む男に何かしらの変わった様子もなく――その身を一切の血を浴びることなく、涼しげな面持ちを崩すことなく、扇で自身の顔をあおいでいる。
「そなた……魂抜けきめりかし?」
 不意に、心の臓が高鳴る。
 扇で口元を隠したまま、こちらへと向けられた眼差しがあった。まるで自ら爛々と煌めくような金色の眼を、自分は知らない。
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#LCB0102 #技術解放連合 #剣契

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